(1)機械装置の改良 昨年度までに、普及型校正装置を製作したが、基準エンコーダの回転軸と割出軸が機械的に接触しており、回転振動が伝わって測定値のばらつきに大きな影響を与えていた。本年は両回転軸間の軸角度誤差、軸ずれを測定し調整できるように改造したうえで、非接触化を図った。その結果、本装置の基準エンコーダの2ヘッド平均、4ヘッド平均との比較測定値の標準偏差はそれぞれ0.08″、0.06″と向上した。ちなみに単一ヘッドでは0.5″。(2)新しい誤差測定回路用の演算プログラムの制作 新しい誤差測定回路を使えるように演算プログラムを制作した。この誤差測定回路は微小角度を時間を使って高分解能に自動測定する時間変換法を実現するもので、従来のものより、より低速測定が可能となるように測定速度範囲を広げ、パソコンのOS更新などに左右されないLAN接続。演算処理の単純化、50以上の複数のエンコーダの同時測定に対応できるようにしたものである。データ処理用のパソコンとLANで接続し、パソコンからの測定条件入力で測定開始し、測定終了後データをLAN経由でパソコンに転送。パソコン側では0.001″以下という高分解能で比較測定値を角度に変換して出力する。(3)校正結果高精度エンコーダを被校正エンコーダとして本装置に取り付けて、校正を行った。自己校正法である等分割平均法に5分割、7分割を適用して校正値を得た。その結果、高精度エンコーダの校正値は±0.3″、偏心誤差を除けば±0.2″であった。校正値の標準偏差は0.08″であった。この高精度エンコーダをこの精度で測定できることから、本研究で試作した安価な普及型校正装置は、研究の当初の目的である精度5″程度のエンコーダの校正に十分な性能を持って供し得るものとの結論を得ることができた。
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