研究概要 |
近年の超高齢社会への急激な推移やメタボリックシンドロームに代表される中高年の生活習慣病の増加に伴い,糖尿病や脳溢血などで運動機能が低下する高齢者が増加し,要介護者に対する介護支援者の人手不足は避けられない問題になりつつある.このような状況において,脳溢血等で片麻痺となった患者の自立や生活の質(QOL)の向上を目指し,喪失した身体機能をサポートする機器の開発が望まれている.また,これらの機器は,現在の情報ネットワークにおけるカフィードバックシステムにも応用が可能である.そこで,我々は人体に実装できるソフトアクチュエータの柔軟性を損なうことなく変位量が測定できる柔軟な変位センサの開発を行ってきた.これらのソフトアクチュエータは電磁ノイズが発生しにくく,人体の意思伝達装置として用いられる筋電センサとの親和性が良い.現在,これら人体に直接取り付ける駆動システムの実用化の障害となっているのは、意思伝達装置としての入力システムである.そこで,本研究では,柔軟性を有した筋電センサの開発と柔軟な変位センサとの一体化を考慮した新しい筋電・変位センサの開発を目指す. 本年度は,手始めとして複雑な人体の動作計測を行う簡易なセンサの開発を目指し,炭素被覆ナイロンを用いた柔軟ポテンショメータを圧縮コイルばね内部に4本用いた『全方向湾曲センサ』を試作し,センサ出力電圧から湾曲角度の変換モデルを提案した.さらに,湾曲角一センサ出力電圧特性を調べることで変換モデルの有効性を確認した.また,人体の表面変位などの微小変位を計測することができる『表皮変位センサ』の開発を目指し,本年度はいくつかのプロトタイプを試作し,表皮変位センサの実現性について検討した.
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