本研究は、繊維工場における動力軽減・自動化の推進・システムの最適化を行う上で重要となる「糸と空気流の関係」について、糸に作用する抵抗力や糸を操作するための技術的な基礎データの収集を行い、広範囲かつ系統的な理論を確立することを目指している。今年度は、円形噴流と環状噴流のもとで、空気流が管路内から大気中へ出た後の速度や密度の変化を解析するとともに、その中に糸が挿入された際の糸の空気抗力測定、飛走速度・振動・姿勢など糸の挙動観察を行ってきた。その結果、以下のようなことが明らかとなった。 (1)管路から出た空気流は膨張拡散するため、流速は急激に減速する。糸にはたらく抗力は、管路内では長さにほぼ比例しているのに対し、管路からはみ出すと増加は認められず、管路外に存在する部分は糸全体の抗力にあまり寄与しないことが確認できた。また、抗力は糸が管路からわずかにはみ出た状態で最大値を示すが、その傾向は管路出口でポテンシャルコアが表れる空気供給圧力の高いときに顕著になることがわかった。 (2)糸の挙動観察から、糸の飛走速度は管路内と管路外では大きく異なり、張力をかけない状態の糸では先端が根元を引っ張るというより、後方から押し出されるように飛ぶ傾向の強いことが確認された。軽くて細い糸では比較的空気流に乗りやすく真っ直ぐ飛ぶが、太い糸や種類によっては、真っ直ぐ飛ぶことが困難となり、大きく横振動しながら飛走することが確認された。さらに、伸縮性を有する糸では、飛走中の伸び縮みは激しいものの、横方向の振動は他の糸に比べて少ないことも確認できた。 実験データと挙動観察の結果を比較することで、これまで単に想像していた現象が具体的に明らかとなってきた。今後、シミュレーション、測定実験、挙動観察を統合することで系統的に整理していく必要がある。
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