繊維工場における動力軽減・自動化の推進・システムの最適化を行う上で重要となる「糸と空気流の関係」について広範囲かつ系統的な理論を確立し、糸に空気流が作用する際の抵抗力や、逆に空気流を使って様々に糸を操作するための技術的な基礎資料を提供しようとしている。今年度は、空気流が管路から大気中へ開放された後の変化(膨張拡散・混合・旋回など)と、その中に糸が挿入された時の飛走挙動(飛走速度、振動・姿勢)について検討を加えた。 1.シミュレーションによる解析から、管路外の空気流拡散は噴流形態(円形・環状)よりも管路径による影響が大きく、管路径が太くなるにつれて空気流量が増すため、軸方向の空気流の減速が緩やかになる。本研究で使用した太い管路では0.3MPa、細い管路では0.2MPaあたりから管路内の空気は圧縮性を伴うようになり、管路出口付近において急激な拡散・膨張が起こっている。この様子を実測データと比較し、シミュレーション結果の妥当性を確認することができた。これにより、任意の条件における空気流が再現できるものと考えられる。 2.糸の空気抗力を測定したところ、管路外の空気流が糸の張力に影響を及ぼすのは、管路出口から5cm程度の範囲に限られ、下流の空気流は糸の張力にはあまり影響を及ぼさないことがわかった。 3.糸の飛走挙動観察から、管路外では下流よりも上流のほうが空気流速が速いため、糸が押し出される形となって糸先端が踊る傾向が強い。また、噴流形態で比較すると、円形噴流よりも環状噴流のほうが空気流、糸ともに安定することが確認された。さらに、細い管路よりも太い管路のほうが空気流の減速が少ないため、糸が一定区間を通過する場合、初速は遅いが、最終的に糸が到達する時間は短くなる。
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