研究概要 |
本研究の目的は,水トリーの微細構造を走査形プローブ顕微鏡を用いることにより詳細に測定し,これを基に詳細な水トリーの3次元等価回路モデルを作製,水トリー伸展の様子や水トリーの検知の最適化についてシミュレーションすることを目的としている。そこで,始めに水トリーの観察結果から水トリーの等価回路モデルの構築を行った。等価回路モデルはこれまで我々が提案したモデルを3次元に拡張したもので,未劣化部分(ポリエチレン【PE】)は抵抗とコンデンサの並列モデルで,水トリー劣化部はその電気的非線形性を考慮し電圧依存型抵抗で表現した。PE試料は縦×横X高さをそれぞれ1mmとし,誘電特性と漏れ電流を実測することで等価回路中でPEを表す抵抗とコンデンサの値を決定した。また,水トリーを表す電圧依存型抵抗の電気特性は水トリーの損失電流の実測値および貫通水トリーの電圧-電流特性より決定した。このように決定された水トリーの損失電流のシミュレーション値は実測値と非常によく一致することが確認された。また,等価回路モデルを用いて,水トリーの進展による損失電流の変化をシミュレーションしたところ,水トリー進展に伴い損失電流波形の前半部が突出し,これは水トリーに加わる電圧が増加するためであることを明らかにした。
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