1.研究目的と今年度の研究概要 本研究は、缶飲料の加熱や保温に用いられる熱源を従来の電熱線式ヒータから誘導加熱方式に置き換え、保温に要するエネルギー消費の削減と加熱効率の改善、さらに長期間の加温による缶飲料の急激な品質劣化の回避を目的とする。平成19年度は、2通りの加熱コイル形状に対し磁場解析と磁束密度の実測、加熱実験を行い、缶飲料に対する加熱特性、従来の電熱線と比較した効率の改善効果、加熱に要する時間を評価した。 2.磁場解析 缶側面周囲にソレノイド状のコイル(主コイル)を配置した加熱装置の磁場解析を行った。解析にはMaxwell-SV(Ansoft)を用い、磁束線図と磁束密度分布、缶側面板内部の渦電流密度分布を軸対象場で解析した。その結果、磁束密度および渦電流密度は缶側面中央付近が最も高く、缶の上部または下部へ向かうにつれて低下が確認された。このため缶の上下にスパイラル状のコイル(補助コイル)を追加配置し均一化を試みた。これにより渦電流密度に変化が現れ、缶下部での低下の抑制と缶側面中央での増加が確認された。 3.磁束密度の測定 新たに購入した高周波対応のガウスメータに合わせて専用の測定台を製作し、磁束密度を実測した。実測値は概ね解析結果と一致しており、解析の妥当性が確認された。 4.加熱実験 磁場解析結果を基に定格100V、15Aの実験装置を製作し、加熱実験を行った。350ml缶を飲み頃の55℃まで加熱するのに要した時間は、1kW注入時で52秒であった。加熱効率は94%であり、従来の電熱線式に比べ約3%改善された。また補助コイルの追加により、約2%の加熱効率と加熱ムラが改善された。 5.おわりに 加熱時間の更なる短縮が望まれるものの、加熱装置として従来を上回る十分な性能を有していることが確認された。
|