研究概要 |
昨年度の研究成果により,340mlの飲料缶を飲み頃温度である55℃まで94%の高効率で加熱できることが確認された。しかし,缶の上下間において35℃程度の加熱ムラが生じることや,約50秒の加熱時間を要するといった実用上の問題が現れてきた。そこで今年度は,加熱ムラの抑制や加熱時間の短縮,更なる加熱効率の改善について検討した。 1.加熱ムラの抑制 缶下部で温められた飲料は自然対流によって缶上部へ流されるため,缶下部は加熱されず加熱ムラが生じた。そこで缶の各部の渦電流密度をMaxwell-SV(Ansoft)によって磁場解析した。缶上下部にスパイラル状に配置されていたコイルに改良を施し,缶上部のコイルを廃して缶下部の巻数を増加させた。検討の結果,缶下部の渦電流密度が缶側面や上面を上回る巻線配置が導出された。この結果を基に装置を作製し実験を行ったところ,従来36℃であった缶上下間の温度差は,13℃まで低減され加熱ムラの抑制が確認された。 2.加熱時間の短縮 電源容量の制約から1.5kWを上限としていたが,加熱時間の短縮効果を観測するため注入電力を増加させ実験した。注入電力の増加に伴い加熱時間は緩やかに減少し,2kWで30秒,2.5kWで23秒まで短縮されることが確認された。しかし注入電力と加熱時間の間には反比例の関係があり,これ以上電力を増加させても加熱時間の格段の減少は期待できないことが分かった。 3.加熱効率の改善 更なる効率改善を図るため,インバータの制御方式やボビンの形状,リッツ線の並列導線数について見直しを行った。並列導線数を増加させ巻線抵抗を1/3まで減らすことで効率を1〜2%改善することが可能になった。 4.おわりに 今年度は実用化を考慮した改良を試み,加熱ムラを従来の36℃から13℃へ,加熱時間を50秒から23秒へ,加熱効率を1〜2%改善することができた。本研究により十分に製品化できるレベルまで到達させることができた。
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