研究概要 |
固体高分子形燃料電池(PEFC)の電極面内の電流分布を,磁気センサを用いて非接触で測定する技術を確立した。本測定法は,PEFC内部を流れる電流により発生する磁界分布を測定し,その測定磁界から逆に電池内部を流れる電流を求める手法である。本年度得られた成果を下記する。 (1)磁界測定時間の高速化:25個の磁気センサを用いることにより,従来約10分を要していた磁界測定を約1/4の2分30秒に短縮し,その測定結果から求めた電流分布の妥当性を,平成19年度に開発した特殊なセパレータを用いて検証した。 (2)磁気センサ位置の検討:2方式の磁界測定位置について,電流分布を求めるための適・不適を比較検討した。 (3)電流分布解析法の高度化:3次元有限要素法を使用して,PEFC内部の3次元電流分布およびこの電流分布により発生する静磁界分布を求める解析プログラムを開発した。この電流/磁界分布統合解析プログラムを用いて,PEFC内部の不連続な電流分布を磁界分布から逆問題的に推定することに成功した。 (4)電流分布に及ぼすガス加湿の影響:PEFC電極面内には最小電流密度/最大電流密度が約0.6に及ぶ電流密度の大きな不均一が発生しているが明らかとなり,その分布は燃料ガスあるいは空気の加湿・非加湿により大きく変化することがわかった。 本測定法はPEFCの構造をほとんど変えることなく電流分布を測定でき,PEFCの発電性能の向上および性能劣化の抑制に役立つ有益な情報を提供できる。今後はスタックへの適用を目指し更に研究・開発を進める。
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