H19年度の研究の目的は「多芯金属バリア超電導テープの作製方法の最適化」であり、研究実施計画は「1.多芯金属バリア超電導テープの作製」、「2.その評価」であった。金属バリアに加工性が良好なNiを選定して多芯金属バリア超電導テープの作製を行ったところ、1.圧延機の回転速度が速すぎてテープに欠損が生じる、2.Niバリア層が厚すぎる、という問題が生じた。臨界電流密度を評価した結果、値はゼロであった。また、臨界温度を評価した結果、超電導状態を示す反磁性の値が非常に弱いことが分かった。これは、Niバリア層が厚すぎて、テープを焼結する際に超電導前駆体が外部の酸素を十分に取り込めずに前駆体が十分に成長できないためと考えられる。この問題を解決するため、1.フィラメント数を19本から7本に減らしてNiバリア層を薄くする、2.圧延機の動力にインバータを取り付けて回転速度を調整できるようにする、3.テープ母材をAgからAg合金(Niの硬度により近いもの)に変えることでテープの加工性を良くする、の3つの改善方法を取り入れてさらにテープ作製を行っていく。 また、根本的なテープ作製方法の改善を目指して、バリア無しの多芯超電導テープについても作製と評価を行った。フィラメント作製時に丸ダイスから六角ダイスに変更することで、完成した多芯テープのフィラメント断面がより平滑なテープが作製できるようになった。その結果、臨界電流密度が5×10^7 A/m^2まで向上した。これは丸ダイスで作製した試料より1.7倍の向上であり、臨界電流密度向上のための指針を得ることができた。
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