H20年度の研究実施計画は、1多芯金属バリア超電導テープの作製方法の最適化、2通電損失測定システムの構築、3超電導ケーブルの交流損失解析の3つである。1については、(1)線材の芯数を19芯から7芯と減らす、(2)圧延機に速度可変機を追加して線材の加工速度を3m/minから0.2m/minと遅くする、(3)線材圧延時の減厚率を3%以下になるように加工する、の3つの修正を加えた。この加工方法によって、加工途中に線材の長さ方向に曲がったり、フィラメント間でひび割れたりする線材の欠陥・欠損は解消された。これまで作製した線材の断面は、Niバリア層の厚さが10〜150μmと不均一で、超電導層は歪んだ構造になっていた。対して、今年度作製した線材断面は、Niバリア層の厚さが約50μmと均一であった。ただし、超電導層はラグビーボール状になっており、薄板状をしたBi-2223相の結晶粒を配向させるのは困難であることが予測された。作製した線材の臨界電流値はゼロであり、また反磁性のシグナルが非常に弱いことから、超電導相が十分に形成されていないことが分かった。以上の結果より、フィラメント作製に用いる金属パイプは、より外径の大きな肉薄のパイプを使用する必要がある、Agパイプに充填するフィラメント断面は丸状のままで充填した方が、超電導相の幅広面がより平滑な構造になる、ことが分かった。また、バリア無し線材では臨界電流値が3.2Aから6.5Aに向上した。2については、LabVIEWにより自動計測システムを作成した。ロックイン・アンプで測定した電圧の虚数値が大きいため、キャンセルコイル等を使ってより精度良く通電損失を測定できるようにする必要がある。3については、古河電工が2006年に発表した30cm超電導モデルケーブルを対象として計算した。これにより、モデルケーブルを作製するための指針を得た。
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