ZrB2は高融点、高硬度、低抵抗率、化学的に不活性であり、また、優れた熱的安定性を有した材料で、各種の応用に期待されている。我々はZrB2薄膜を集積回路配線の材料としての適用を念頭において、初年度はZrとB粉末を焼成したターゲットを用いて、通常の高周波スパッタリングによる成膜を試み、得られた薄膜のキャラクタリゼーションを調べることを重点として行った。得られた薄膜は金属光沢をした連続膜であり、X線回折の結果、ZrB2に相当する位置にブロードで微弱な回折線が認められ、微結晶粒からなる組織を持った多結晶ZrB2薄膜が得られたことを示唆している。オージェ電子分光分析により、薄膜の深さ方向の元素プロファイルを調べると、Zr:B=1:2の組成の膜が得られていることが解ったが、同時に、10%強程度の酸素と数%の炭素が混入していること解った。これは、粉末焼成によるターゲット由来のものであると思われ、ターゲット作製の工夫が必要であることを示している。得られた薄膜の抵抗率は基板依存性が認められ、Cu薄膜上で、低い低稿率を呈し、SiO2基板上では抵抗率が高くなるという、興味深い現象が見られた。原因については、今後の検討が必要である。得られた薄膜を試みに、配線のバリヤ材料としての適用を予備的に調べるために、Cu/ZrB2/SiO2/Si積層構造試料を作製し、そのバリヤ特性を調べた。3nm厚さとした、ZrB2薄膜は良好なバリヤ特性を示し、500℃30分の熱処理を行っても、X線反射率測定から、その積層構造に変化は無く、安定なバリヤとなる可能性を示すことがわかった。次年度はさらに電子顕微鏡による微細構造を検証するとともに、成膜方法についても検討を進めて行く予定である。
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