研究概要 |
本年度の目的は,LDPE(低密度ポリエチレン)とエポキシ樹脂(EP)に金属フタロシアニン(Ph_M)と無機ナノフィラーを添加して作成した芳香属添加ナノコンポジット絶縁材料に関して,耐トリーイング性の向上効果が発揮できる作製条件(金属フタロシアニン金属および無機ナノフィラーの種類,添加量等)を確立することにあった。以下に本年度の研究によって明らかになった事項を示す。 1.LDPEにおける金属フタロシアニン添加効果について,フタロシアニンの中心金属の違いおよび添加濃度の影響を中心に検討を行った。フタロシアニンの中心金属としては,Mg, Ni, FeおよびCuを用いた。実験の結果,Ph-NiとPh_cuがトリー発生電圧の上昇に効果があることがわかった。LDPEに対して0.5wt%〜1wt%のPh_Niの添加でトリー発生電圧は1.2〜1.5倍上昇する。Ph_Cuの添加では同様の濃度で1.5〜2倍程度上昇する。 2.EPにおける金属フタロシアニン添加効果も,中心金属の違いによって異なることがわかった。トリー発生電圧の上昇効果はLDPEより高く,Ph Cuの0.5wt%添加において無添加より2〜3倍程度の上昇が見られた。 3.上記したトリー発生電圧の添加剤依存性(フタロシアニン中心金属の種類への依存性)は,LDPEあるいはEP中に析出する添加剤の形状と大きさに対応している。添加剤が針状あるいは帯状に析出する試料の場合は,トリー発生電圧の上昇はみられない。 4.無機ナノフィラーについては,実験の結果,Al2O3のlwt%添加として,それにph_cuあるいはPh-Niを添加すると,トリー発生電圧は1.5〜12倍程度上昇する。 5.Ph_CuとAl2O3の両方をLDPEに添加すると,トリー発生電圧は2倍以上の上昇が見られ,なおかつ測定値のばらつきがそれぞれを単独に添加した試料と比べて50%程度にまで減少する。
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