1.SFD装置の製作:超臨界流体堆積(SFD)装置を製作した。装置は液体CO_2を加圧送液するポンプ、加温するオーブン、および大気圧との差圧を保持する保圧弁から成る。基板はオーブン中に設置した堆積セル中に置き、有機材料は二つある送液ポンプのうち、一つからCO_2とともに堆積セル中に供給される構造とした。SFDによる有機薄膜作製は前例がなく、圧力・温度の設定およびそれらの変化速度など未知な部分が多く、装置はそれらを比較的自由に設定できるよう配慮した。2.単純成膜試験:装置の動作確認も兼ねて、単一物質の成膜を試行した。材料にはアントラセンを用い、圧力10〜20MPa、温度は40〜100℃の範囲とした。基板にはITOガラスを用い、成膜後に光学顕微鏡にて表面を観察した。結果からは、アントラセンがCO_2に溶解、基板上に供給されていることが確認できた。堆積の形態は様々であり、数μm以下の微粒子状、数100μmの結晶状、および薄膜状のパターンが見られた。これらの形態は制御できるまでには至っていないが、概ね低温にて成膜した際に薄膜が得られる傾向が把握できた。次に、低分子系有機EL材料として用いられるAlq3を材料として同種の実験を行い、Alq3においても条件によっては薄膜状の析出物が得られた。一方、圧力を急激に降下させた際には微粒子状となる傾向が現れ、また、一定圧力にて温度を徐々に低下させた場合は結晶状の析出物が得られることが判った。
|