最近のナノファブリケーション技術の向上による、ミクロな磁気サンプルの計測技術の構築が急務となっており、SQUIDの超高感度性を十分に活用した走査型SQUID磁気顕微鏡が注目を集めている。SQUID磁気顕微鏡では、微小領域の評価の可否を決定する空間分解能が性能を左右している。室温・大気中にあるサンプルを高空間分解能をもって測定できる技術開発が重要な課題となっていた。これまでSQUIDプローブ磁気顕微鏡を開発し、その評価を精力的に進めてきた。SQUIDを真空冷却し、室温・大気下の高透磁率プローブをSQUIDに近接させて、SQUIDとプローブとの熱的遮蔽を実現した。高透磁率プローブがサンプルの磁場を局所的に集束し、SQUIDに伝達することで室温・大気サンプルの磁場分布の測定を実現できた。しかしながらこれまでのSQUID顕微鏡ヘッドでは真空槽の内筒と外筒とが、ヘッド上端で固定されて機構上の基準点となっており、液体窒素導入後にステンレス製の液体窒素容器が冷卸によって縮み、プローブとSQUIDとの距離が広がるために磁束の結合効率が大きく劣化していた。 本研究ではSQUIDプローブ磁気顕微鏡のさらなる空間分解能向上のために、検出磁場分解能を向上させることを目的とした。機構上の基準点を冷却ロッドの先端部に置き、内筒の縮みによるSQUIDとプローブとの間隙の変化を防ぐために、冷却ロッドと外筒とを固定子によって強固に接続した。固定子をつけただけでは、内筒の縮みによって固定子もしくは内筒の破損に至るため、真空ベローズによってヘッド上部にて内筒と外筒とを接続した。内筒の縮み量だけ真空ベローズが伸びて機械的なストレスを吸収させた。固定子形状およびベローズの検討・評価を行ない、ヘッドの温度によらずにSQUIDとプローブとの間隙を一定に保つことが可能となり、かつSQUIDを動作温度に保って検出磁場分解能の劣化要因を排除することに成功した。
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