研究課題
本研究では、電子をナノ構造制御する手法を拡張し、また、新規な物理現象を探索するために、単一の自己組織化InAs量子ドットに対して、その上から直接ナノギャップを有する極微細電極を形成して、単一電子トランジスタ構造を作製し、電極構造やクーロン、電子スピン相互作用、テラヘルツ電磁波などを用いて、系の電子状態が多彩に制御できることを実証し、新しい素子への応用を探索することを目的としている。平成20年度には、以下の3点について研究を遂行した。1、自己組織化InAs量子ドットを用いた単一電子トランジスタの形成法の高度化と確立、基礎物性の解明(1)新たに、原子間力顕微鏡を用いたリソグラフィー技術を用いることで、より高品質な自己組織化InAs量子ドットの形成位置の制御を試みた。これにより、50nm程度の小さな量子ドットの位置制御が可能になると考えられる。(2)量子ドットの成長温度を制御することにより、試料のトンネル抵抗を制御可能であることを示した。この発見により、50nm以下の小さなドットにおいても、ドットと電極の結合を強くすることが可能になった。2、超伝導体・強磁性体電極を用いた単一量子ドット素子の作製(1)極微細電極の材料として、Alを用いた超伝導体・量子ドット接合について、初めて超伝導電流を観測した。また、超伝導電流と近藤効果の相関についての知見を得ることに成功した。(2)極微細電極の材料として、Niを用いた試料を作製し、強磁性・量子ドット・常磁性接合を作製した。この試料において、系がスピンフィルタとして動作することを示した。3、単一量子ドットのテラヘルツ伝導ダイナミクスの解明のための準備テラツ電磁波によってドット中のサブバンド間遷移を誘起し、それに伴う電子のダイナミクスを観測するために、擬似自己相関テラヘルツ分光系と伝導測定系の立ち上げを行った。この系で1〜80TMz程度までのテラヘルツ電磁波を試料に照射することが可能となった。
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http://thz.iis.u-tokyo.ac.jp/top.html