現在、高効率が得られる色素増感太陽電池の研究においては、多くの場合、ルテニウム錯体色素が使用されている。本研究においては、高価なルテニウム錯体色素以外の安価な色素を用いて高効率な色素増感太陽電池を実現することを目的としている。 平成19年度の研究においては、まず、安価な紫キャベツ色素を用いて色素増感太陽電池を作製した。その結果、本研究を開始する前と比較して約2倍の変換効率(約0。4%)が得られた。また、酸化物半導体ペーストを作製する際に使用するポリエチレングリコールの分子量を大きくしたところ(分子量200万)、約1%の変換効率が得られた。 約1%の変換効率は、ルテニウム錯体色素を用いた太陽電池の最大値約12%と比較すると約1/12であるが、色素の価格が約1/1000であるため、変換効率を色素の価格で割ったコストパフォーマンスは紫キャベツの方が約80倍良い。本研究で用いている光源がハロゲン・ランプであり、標準光源と比較して変換効率が高くなることを考慮しても、コストパフォーマンスは約50倍良い。 また、紫キャベツ色素は植物色素であり、自然界の中で自動的に作製される。現在、この様な考え方を基に、トウモロコシからバイオエタノールが生産されている。従って、紫キャベツ色素を用いることは、環境に対しても極めて良いことである。 さらに、平成19年度においては、紫キャベツ色素に少量のクルクミン色素を加えることで、変換効率が向上することも確認した。
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