申請者はこれまでにMEMS技術を利用し、微小な生物・化学センサを集積したデバイス開発を目指している。これは極微量の血液・体液に含まれる抗体や蛋白の種類を認識し、電気信号に変換するセンサ素子である。一方、生物は巧みに生体物質を自己組織化し、目、舌、鼻等の表皮に感覚細胞群を構築している。センサ素子の高度・高機能化には、このような生物の感覚器形成の機構を模倣する必要がある。本研究では、電気回路内に種々のバイオセンサ素子を高密度に配列化するための新方法の確立を行う。そのため以下の2点を研究目的としている。 (1) 電気回路内に機能性分子を任意の位置に配列させることが第一の研究目的である。 (2) 機能性分子の配列はデバイス上にて電気的制御で実現することが第二の研究目的である。 昨年度は(1)の要素技術を確立した。ここではガラス基板上に電極センサを構築し、その電極上に薄膜を形成させた。この薄膜表面には、あらかじめ機能性物質を固定化できる微小粒子(カプセル)を配置させた。このカプセルに細胞由来の生化学物質が固定化される方法である。微小カプセル表面には、あらかじめ蛍光によって発光する標識分子を固定化し、蛍光顕微鏡で発光強度を測定した。昨年度は分子固定化の最適条件を見出した。このような方法を応用して、微小カプセル表面にIgG(イムノグロブリン)抗原を集積させ、IgG抗体の応答についてセンサ応答性機能を調査した。しかし電極に電流を負荷させると、条件によっては電極や薄膜が崩壊し、上手く信号を検出することが難しいことが分かった。そのため今年度は(2)を達成するために薄膜に添加物を加え、安定な信号検出が可能なセンサ電極表面の製造方法を検討し特許出願を行った。
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