本年度実施計画に基づき、コプレーナストリップ線路を用いた左手系媒質の漏洩定数の抽出法を検討した結果、漏洩定数は左手系媒質を構成する繰り返し周期を可変にすることによる放射電力量の変化から評価できることを見出した。そして本抽出法を前年度に検討したアンテナ構造に適用し、漏洩特性の詳細な検討を行った。その結果、位相定数を一定としたときの漏洩定数の変化量が小さく、低サイドローブ特性を持つアンテナの構成が極端に制限されることが判明した。そこで、本年度は新たなアンテナ構造の検討を行い、ストリップ線路の側面に平行に細いストリップ線路を付加することで、従来構造の欠点の克服が可能となることを先ず、数値計算結果から明確にした。次いで、新たに導入した形状のアンテナをスケールダウンしたマイクロ波帯にて試作し、放射特性の測定を行うことで、形状の有用性を実験的にも検証した。一方、もう1つの実施計画である前年度開発した平面回路線路に任意形状導体片や欠損が存在する場合の回路素子解析プログラムを用いた回路開発については、まず、超広帯域無線用のUWBフィルタの設計を行い、設計仕様を満たすフィルタが任意形状を用いる特長を活かした超小型で構成可能なことを見出し、試作フィルタの測定結果からもその有用性を確認した。また、開発プログラムを基に左手系媒質構築のための設計法についての検討も行った。その結果、有限数の周期構造の伝送特性を評価関数にした最適化による左手系媒質の構築が1つ設計法となり得ることを数値的に明らかした。また試作した媒質の伝送特性の測定結果からも左手系として動作することが確認できた。次年度以降の研究はこれら本年度の研究成果をもとに進めていく。
|