研究概要 |
電子のバリスティック伝導によって生じる非線形な電気特性を利用した新しい原理の電子デバイスを開発するために,InAs/AlGaSb へテロ構造を用いてバリスティック整流デバイスを作製して幅広い温度範囲で電気・磁気特性の評価を行った.4.2K,77K で明瞭な整流特性が観測され,平均自由行程が500 nm程度の室温においても整流効果の観測に成功した.斜めに量子細線型構造を配置した微細化デバイスでは,磁場を印加した状態で整流特性を評価することで構造内のバリスティック電子の状態について新しい知見を得た.さらなる高性能化のために,量子細線をT 字型に接合した量子細線3 分岐構造(Three-terminal Ballistic Junction : TBJ)の試作と評価も行った.TBJ では基準電位が存在することから,回路応用の観点でバリスティック整流デバイスよりも有用である.InAs/AlGaSb 系TBJ においても,明瞭な整流特性が観測され,温度依存性や素子サイズ依存性からバリスティック伝導がより支配的な状態で強い整流特性が得られることが分った.またTBJ におけるパルス入力に対する応答特性を評価したところ,nAs/AlGaSb 系TBJ ではGaAs/AlGaAs 系TBJ と比較して約1 桁高い周波数での動作を確認し,高速動作の可能性を示した.
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