研究概要 |
今後の本格的なブロードバンドサービスの展開を容易にするため, 波長多重技術を適用した都市網を経済的に実現することが必要である。本研究は,その実現に向けて, 筆者が独自に提案した「マルチファイバ型波長多重ネットワーク」の性能を評価し, その有効性を明らかにすることを目的とする。本研究期間では,次の二つの課題について取り組んだ。第一の課題はノード間に設定される光パスに波長を割り当てる場合, 光伝送特性の観点から最も劣化の少ない波長割り当て方法を明らかにすることである。これは,波長多重ネットワークでは周知の「波長割り当て問題」の一例である。筆者らは, 波長多重ネットワークで, 特に問題となる非線形雑音の最小化の観点から, 四光波混合雑音を最小とする波長割り当て方法を提案した。提案方法は, 四光波混合雑音が伝送帯域の中央で最も多く発生する性質に注目し, 伝送帯域中心をスライドさせることで, 特定の光パスへの雑音集中が避けられるという特徴がある。近似的な理論解析および光ネットワークシミュレータによる解析より, 提案方式は雑音量が理論的な最小値に近い特性を実現できることを明らかにした。第二の課題は, ノードにおける光スイッチ網の構成技術に関するものである。光スイッチ網は2×2単位スイッチを組み合わせて実現されるため, そのスイッチ規模は小さい方がよい。従来,最も広く用いられているクロスバー型スイッチは入出力ポート数をNとすると, スイッチ規模がNの2乗に比例して大きくなる欠点があった。スイッチ規模が小さい構成法も知られているが, 再配置が必要になるという問題があった。筆者らはクロスバーと同等のノンブロック性を保持したまま, スイッチ規模をN(N-1)に削減できる新たなスイッチ構成法を見出した。これらの研究成果は,下記の発表論文にまとめられている。
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