研究概要 |
DNA系列をDNA計算やデータの蓄積などに工学的に応用するための基礎理論の構築を目的とした.具体的には,記号力学系の意味での位相的エントロピーを求める方法を示した.これは情報理論における誤りのない通信路の通信路容量を,より一般的な系列の集合に拡張したものである. DNA系列は4文字の系列であると見なすことができるが,工学的に利用できるのはいくつかの条件を満たすものだけである.そのような系列の数は,長さとともに指数関数的に増えていくが,そのときの指数の係数が位相的エントロピーに対応する. DNA系列の力学系的なモデルである,DyckシフトとMotzkinシフトのエントロピーの求め方を示した.そのために,文脈自由文法と解析的な組み合わせ理論とを応用した.また,これらのエントロピーを求める際に,文脈自由文法で記号列の並び方を記述することが非常に重要であることを示した.簡単な例であれば,解析的に解くことが可能であるが,工学的に有用な制約と組み合わせた場合には,計算機を援用した計算が必要になる.
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