研究概要 |
本研究では新しい原理に基づく「光線空間カメラ」の研究を行うことを目的とした.1画素で1本の光線を取得するという従来のカメラの概念にとらわれず,光学系による光線の制御と2次元イメージャの後段の信号処理とを組み合わせることによって原光線情報を復元する新しい光線取得原理を探求することを目指した. まず,光線空間データをRadon変換したデータのうち,光線空間の軌跡の直線性の強い領域,すなわちある限定された範囲内の奥行きにある物体の軌跡に相当する領域だけから射影データを取得し,その射影データから周波数領域でのフィルタリング及び逆Radon変換によって,原光線データを復元する手法を確立し,最大で1画素あたり10本の光線に相当するデータが得られる手法を開拓した.次に,上記Radon変換とサブサンプリングを光学系により行う手法を検討した.例として凸レンズによる結像系を考え,イメージャの実像を3次元シーン内部の物体周辺に定位させることによって,光線空間の軌跡の直線性の強い領域において多数の光線の重畳情報に相当する射影データを取得することが可能であることを示した.これによってイメージャのセンサの実像を空間内で走査させるような光学系によって,Radon変換における射影方向を走査させることが可能であることが明らかとなった. これらの成果により,光線制御光学系・2次元イメージャ・信号処理装置の全体を一体とした新しい光線情報取得装置の新しい原理の開拓に成功したと言える.
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