誤り訂正符号を、電子透かしの信頼性向上の目的で用いる場合の復号法とその性能評価について、今年度は以下のように研究を実施した。 (1)誤りの解析:パッチワーク法などの方法で電子透かしを埋め込んだ画像に、MPEG圧縮・伸張やランダムノイズの付加などのメディア処理を行い、メディア処理のパラメータと生じる誤り個数の関係についてシミュレーション実験を行い、データを収集した。 (2)電子透かしにおける誤り訂正符号の性能評価:復号法としては、Chase復号法、OSD復号法、再帰的最尤復号法のプログラムを従来から保有するプログラムライブラリに追加する形で作成した。 そして、上述の(1)と同様の電子透かしとメディア処理について、誤り訂正符号を用いた場合の復号後の誤り率の評価を行った。符号としては、符号長が64および128、符号化率が1/2程度の符号を対象とした。 (3)誤り検出を考慮した復号方法の検討:電子透かしの抽出においては、復号に失敗しても(誤り検出に留めても)復号後の誤り確率が低いことが重要である。このため、全体の符号化率を1/2程度として、2段階で符号化を行い、内符号で誤り訂正を行い、外符号で誤り検出を行った場合の復号後の誤り確率、復号に失敗する確率、正しく復号する確率の評価を行った。さらに、復号前の誤り数と復号後の誤り率の関係についても調査を行った。その結果、符号の最小距離の半分を超える誤りに対しても、復号後の誤り確率を10万分の1程度に抑えつつ、従来の同目的の手法より、かなり高い正復号確率を得られることがわかった。これも含め、復号後の誤り確率と正復号確率のトレードオフについての知見を得た。
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