研究概要 |
ネットワーク符号化法は,スループットを向上させるだけでなく,盗聴や遅延に対する耐性を向上させるなどの機能をオーバーレイ的に実現することもできる.本研究は,ネットワーク符号化法において有用なさまざまな機能を実現することを目標としている.本年度は,送信者が選択した受信者のみがデータを知ることできるという新しい機能の実現を検討した.このような受信者選択の機能は,有料配信やアクセス制御などの受信者識別が要求されるアプリケーションに有用である.受信者選択の機能を実現するネットワーク符号法をrevocable network code(RNC)と呼ぶ.本年度に検討を行ったRNCは,送信者が受信者として選択しなかった受信者へのデータがネットワーク中のノードで行われる演算によって自動的に破壊されることで,受信者選択の機能を実現している.データの自動的な破壊とは,そのノードが送信するデータが無意味なビット系列に変換されることを意味する.このような変換を実現するために,本年度のRNCでは,4を法とした整数の集合を利用した.この集合は,4を法とした乗算の下でモノイドになり,0と2に対して逆元が存在しない.この性質を利用することで,無意味なビット系列に変換されることを情報理論的に保証している.しかし,本年度の研究により,この実現法が適用できるネットワーク構造は限定的であり,一般的なネットワーク構造への拡張は困難である.来年度の研究では,一般的なネットワーク構造に適用可能な受信者選択機能の実現法の検討を行う予定である.
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