研究概要 |
ネットワーク符号化法は,スループットを向上させるだけでなく,盗聴や遅延に対する耐性を向上させるなどの機能をオーバーレイ的に実現することができる.本研究は,ネットワーク符号化法において有用なさまざまな機能を実現することを目標としている.平成19年度は,1ビットのデータに対して受信者選択の機能を実現するネットワーク符号化法の開発を行った.平成20年度は,複数ビットのデータを送信可能かつ受信者の選択可能なネットワーク符号化法の開発及びそれを適用可能なネットワーク構造の特徴付けを行った. 平成21年度は,匿名性・データ認証を実現できる符号化法の研究に取り組んだ.実現したい認証関数が決まったとき,それを計算するための中間ノードの計算(符号化)を決定する必要がある.本研究では,この符号化とビットスライス実装の類似点に着目した.ビットスライス実装では,関数をビット単位の論理関数に分割する.その一つの論理演算を中間ノードでの符号化に対応付けることにより,ネットワークでその認証関数の計算が実現できる.そして,符号化の効率性をNetwork computing theoremから評価できることを示した.一つの認証関数に対してビットスライス実装は一意ではないため,符号化の効率性を評価できることは,重要である.本研究では,この評価を利用して,ある非線形関数に対して,従来知られていたビットスライス実装よりもさらに効率的なビットスライス実装を示した.一方,この符号化の場合,ネットワーク構造が認証関数に依存するという欠点があることも判明した.
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