研究概要 |
本研究の主たる目的は,複数のトーションフリーシステムを基本として時間遅れを有して結合させたカオスシステムを用いた簡便な秘匿通信方法の開発することにある,具体的には,Van der Polシステムに発生するカオスを結合方式に関する変調を施すことによって制御される新しい通信システムの提案および開発を試みることにある. 当該年度の研究計画では,システムの集積化に対する前段階の検討,例えば結合形式の詳細な検討やシステム遅延時間の検討,であった.最も大きな成果は,遅れ時聞結合システムにおける新しい同期に関する現象を発見し,そのメカニズムを実験的に明らかにしつつあることである具体的には,特定の双対システムを選んだ場合に,これまで研究されていたシステムには見られなかった同期窓が存在し,その周囲にはインターミッテンシー領域が存在することがわかった.このような現象は時間遅れがないシステムにおいてよく観測される現象であるのだが,時間遅れを有するシステムで観測された例はない,この現象用いた通信システムは初期に提案していた通信システムより取り扱いが簡便である可能性が実験的に示されつつある.また,この現象はPyragas等の提案した時間遅れフィードバックシステムの安定性の理論と一見矛盾しており物理的に非常に興味深い. 本結果は,申請者が発見し,ドイツダルムシュタット工科大学において複数の国際機関が共同して,その詳細に関して検討している.
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