本研究は、高齢者用の音声認識インタフェースを実現するための要素技術研究であり、高齢者音声の音響的特徴を明らかにすることが目的である。平成19年度は主に以下の項目の研究を行った。 (a)高齢者音声データベースの整備 高齢者音声の分析には、音声データベースが不可欠であるが、これまで保有したデータは年齢分布の偏りが大きく、特に80歳代のデータが少なかった。平成19年度は年齢層の偏りを緩和すべく、新たに男声21名、女声29名の収録を行った。これによって、50歳代〜80歳代男声87名、女声79名のデータベースを作成することができた。80歳以上についても、男女各13名分収録した。 (b)高齢者音声を特徴付ける表現語の抽出 高齢者音声の聴感的特徴が明らかになれば、それに対応する言葉をデータベースから集め、分析することによって、音響的特徴を抽出できる。そのために、高齢者音声と非高齢者音声の聴感的特徴を区別するための表現語を抽出する方法を開発した。数冊の辞書から音声の性質を表現する言葉を抜き出し、その中からアンケートで年齢に関係する言葉を抽出した。次に聴取実験によって、抽出した表現語と各年齢層の話者の音声との相関関係を求めた。そして、クラスタ分析の手法によって類似した概念の表現語をまとめて絞り込み、高齢者および非高齢者それぞれの表現語を求めた。最後に、高齢者および非高齢者を区別するための表現語対として整理した。結果として、男声に対して10対、女声に対して11対の表現語対が得られた。
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