研究概要 |
本研究では昨年度まで,アナログTV放送波(NTSC方式)を用いたヒト検知システムの検知性能を,実測により定量的に評価してきた.しかしながら,2011年にはアナログTV放送波が停止する予定であり,その場合にもディジタル放送波によるヒト検知システムを実現する必要がある.本年度では,OFDM方式のディジタルTV放送波を利用して,ワンセグ受信機を利用して受信レベル変動ならびにBERを測定し,ディジタルTV放送波がヒト検知に利用可能か否かを検証した.その結果,ディジタルTV放送システムにおいて実現されるSFN構成では,受信レベルが安定する傾向があり,受信レベルのみではヒトを検知することが困難であることが分かった.一方BERをモニターした場合,SFN環境において受信レベルがほとんど変動しなかった場合においても,BERはヒトの移動に対して大きく変動したことを確認でき,ヒト検知に利用可能であることを明らかにした.また,本ヒト検知システムは,屋外要因によるTV電波への影響を把握しておくことが重要となる.本年度では,屋外要因の影響として,屋外を動く車両の影響に着目し,車両として自動車と自転車に着目して,車両が動いた場合における電波の受信レベル変動を,アンテナの設置位置を様々に変化させた場合において測定した.その結果,反射領域の大きい自動車における受信レベル変動が,自転車におけるそれに比べて,大きくなる傾向があることが確認できた.アンテナの室内における設置位置については,ほとんど影響に差はなかった.また,TV放送局と見通しの無い環境におけるヒト検知システムの実現を目指し,山岳回折して到達するTV放送波の受信レベル変動特性における気象による影響を定量的に評価した.その結果,TV放送波の見通し外伝搬では,わずかに気象の影響を受けるが,2〜3dB程度の変動であることを確認した.
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