本研究では、複数のチップ幅で構成する新しい方式の相補符号系列の応用について検討している。相補符号系列は、一組の符号系列から構成され、各々の符号系列の自己相関関数を求め、それらを足し合わせると時間シフトがゼロ以外においてゼロ値となる、すなわちサイドローブがゼロになるという符号系列である。複数のチップで構成する相補符号系列はメインローブの構成が従来のものと異なり、このような符号系列は数多く見つかっている。これまでにレーダへの応用において、この符号系列の有効性が明らかになった。本研究では、この符号系列の移動体通信、情報セキュリティ等へ応用し、その有効性を検討することを目的とする。 平成21年度は、複数のチップ幅に圧縮する相補符号系列について計算機を用いた探索を行った。そして探索により見つかった符号のPAPRなどについての特性評価を行った。これまでの検討において、PAPRの小さな符号としては、相補符号系列が4組ある場合、その中に相互相関特性が完全にゼロとなる完全相補符号系列の組み合わせが4つ以上存在していた。そこで、そのような符号の組み合わせを探索したところ、多くの相補符号系列を見出すことができた。それらの相補符号系列を適用したOFDM通信シミュレーションを実施しPAPRを計算したところ、従来方式に比べ提案方式の相補符号系列のPAPRが小さいものが存在することが分かった。
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