平成20年度は、リフティング構造で実現されたMチャンネルフィルタバンクの最適化と、バイナリー係数による可逆、非可逆統一符号化の実装を行った。 非可逆符号化の場合には、フィルタバンクの符号化利得を最大化することにより、最適ではないが良好な符号化性能が得られることが知られているが、可逆符号化の場合にはこの限りではない。基本的には高符号化利得を持つフィルタバンクが可逆符号化にも適していると考えられるが、丸め操作により、変換係数が変わるため解析は困難になる。そこでより丸め操作が少なくなるように構造を変換し、その性能を従来法と比較した結果、可逆符号化の際にも劣化が抑えられ良好な性能が得られた。 また、より演算量の少ないハードウエア実現を考慮して、リフティング係数をバイナリー値に変換し、劣化を抑えつつより高速な実現が可能になった。 最終的に、Mチャンネルフィルタバンクの丸めの少ない、高速実現可能なリフティング構造を提案し、可逆、非可逆両モードにおいて、同一の回路でJPEG2000の性能を上回る変換符号化器が実現できた。
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