今年度の実施計画に対する研究成果は次の通り。 1. 電子透かしの歪みモデルの妥当性を検証するため、電子透かしシステム、画像処理ツール及び電子透かし攻撃ツールの調査を継続して行った。 2. 電子透かし検出システムの補正問題はデコンボリューション問題として取り扱うことができるので、この問題を3つの場合:(1)歪みモデルが既知あるいは何らかの方法で推定可能な場合、(2)歪みモデルが未知ではあるが、その平均や共分散などの統計的性質が既知あるいは推定可能で、かつ透かし情報の集合に関する情報を利用する場合、(3)歪みモデルが未知ではあるが、その平均や共分散などの統計的性質が既知あるいは推定可能な場合に分けて、それぞれについてベイズ推定に基づいて問題の定式化を行い、その解法について議論した。 3. 上記の(2)と(3)の場合はブラインド・デコンボリューション問題になる。平成19年度は(2)について重点的に研究を行った。平成20年度は制約条件が最も少ない(3)について重点的に研究を行い、この問題がEMアルゴリズム(Expectation-Maximization Algorithm)を用いて解決できることが分かった。このアプローチにより電子透かし検出システムの補正アルゴリズムを与えた。 4. 本研究で開発したアルゴリズムが通信路等化や画像復元の分野で現れるブラインド・デコンボリューション問題に適用できるための条件を明らかにした。 5. 本研究を総括し、報告書等の作成を行った。また、今後の課題について整理した。
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