2002年から2004年にかけて南極で行った流星バースト通信観測実験の結果、通信路に極地特有の性質を示唆する結果が得られている。極地特有の性質を把握するために、中緯度においても長期の連続した観測が必要であるが、日本国内において1年を通じて連続した実験は行われたことがなかった。 本研究の目的は、静岡大の福田教授の退職とともに休止していた実験システムを、沼津高専、都立産技高専を中心に構築し長期の観測体制を整えることである。平成19年度は実験局の開設に向け観測場所の調査とシステム構築の準備を行った。平成20年度は実験機器の製作と観測点へ機器の設置を行い、実験を開始した。また、距離と通信路の関係やスポラディックE層の影響などを観測するために日本国内にさらに数か所の観測点を置くべく調査を行った。 1)[無線機器の開発]無線機器の仕様書を作成、業者に発注し、2台の実験装置を製作した。この装置にはシングルボードコンピュータを導入することにより、インターネットを介して遠隔からの実験装置の操作が可能となった。2008年10月に既存の旧型1台とともに合計3台の機器について、無線試験実験局としての審査を受け、総務大臣名の免許を取得した。 2)[観測場所の調査]観測点として、観測点が日本列島に等間隔に配置されるように一関高専、阿南高専を候補に挙げその2か所について調査を行った。阿南高専は周囲ノイズが大きく問題があり、観測点とするには曜日依存性などの把握が必要である。一関高専は機器のトラブルもあり充分な調査結果が得られなかった。今後さらに時間をかけての調査が必要である。 3)[観測の開始]2008年12月に停止していた北海道大学の装置を整備し送信を開始した。同時に都城高専、産技高専に無線機器を設置し、既設の沼津高専を含め3か所で観測を開始した。
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