研究概要 |
本年度は,バンクマシンの音響信号情報を用いた疲弊札判別システムの構築に向けて, 1.実時間処理を意識した判別アルゴリズムの確立の目的の完成度を目指すとともに、実用レベルの判別精度に近づけるために、 2.実時間処理における高精度判別可能な音響特徴量の計算法に重点を置いて研究を進めた。また、これと並行して 3.組み込み型システムによる疲弊札判別ハードウェアの開発と実用試験を進めた。 上記の1.および2.の目的を達成する手法として,昨年度より開発を継続している教師あり自己組織化特徴マップ(教師ありSOM)を用いた音響エネルギーパターンからの紙幣疲弊度推定法において、疲弊度相関情報を用いた特徴選択手法を、(1)相関情報による重み付け、(2)相関情報によるパターン要素の選択、(3)エネルギーパターンの周波数帯域分割、の3手法を併用することにより高精度化を試みた。 実紙幣サンプルを用いた実験結果から,特徴選択を上記3手法で改良することにより、音響特徴量のパターンサイズはより削減されて実時間処理が高速化でき、なおかつ疲弊度推定の精度を従来手法の約1.5倍に改善できることが明らかとなり、上記目標1および2について、実用レベルにさらに近づけることができた。とはいえ、いまだ3.の実用試験に十分耐えうる疲弊度推定性能を達成できたとは言い難い状況が続いたため、本年度は1.および2.の目標達成に研究時間の大部分を費やした。その結果、本年度の残る課題であったハードウェア開発と実用試験は未完となった。 以上の成果を国内外学会にて発表するとともに,4編の論文にまとめ,その1部は条件付きで掲載が決定した。
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