研究概要 |
本研究では、渦の流れを含む非定常、局所的な風速の時空間分布を、遠隔測定できる音波トモグラフィ風速計測システムの実現に向けた検討を行った。本問題における計測対象が局所的変動の大きい渦の風速ベクトル場であることから、従来はトモグラフィ理論および装置実現上の双方から困難をきたしていた。これに対し本研究では、領域内に回転対称な渦が一つだけ存在するという仮定のもとに、監視領域を挟んで送受信される数十程度の平行ビーム伝搬時間データから、領域水平断面内の渦の風速場を再現する方法を提示した。これにより、線路や滑走路の両サイドに数mおきに荒い間隔で音波センサを設置するだけで済む渦風速場の遠隔測定を実現した。提案法の有効性を検証するために、監視領域の両サイドに10対の音波送受信センサを配置した構成の室内模擬試験装置(路幅50cm,路長50cm)を構築した。これに基づいて、種々の前提条件(風速場の2次元近似、音波の直線経路伝搬モデルなど)の妥当性、センサの設置間隔と風速場の再現精度の関係、などの基本性能を評価検証した。これらの検討の結果、1秒程度の準リアルタイムでの高速測定(1枚の映像の再現に要する時間)ならびに、10%以内の最大風速値の測定精度が確認でき、屋外の突風監視システムとして実現するに当たって有望な見通しを得ることができた。
|