研究概要 |
地球環境の保全は人類の将来にとって非常に重要な課題である。その中で人工衛星や航空機による地球観測は,重要な役割を担うリモートセンシング技術である。2006年1月24日に世界最初の偏波合成開口レーダ(PALSAR)を搭載した日本の人工衛星ALOSが打ち上げられた。本研究の目的は,このPALSARから得られる散乱行列を基に,地上ターゲットを精度良く分類・識別することである。最も重要な点は,偏波データが与えられたとき,それを分類・識別・判別・同定にどのように役立たせるかであり,今年度は実データの解析に重点を置いて研究を実施した。 昨年度に確立した4成分(表面, 2回反射,体積,ヘリックス)散乱モデル分解手法を実際に取得されたALOS PALSARデータに適用し,データ解析を試みた。宇宙開発研究機構(JAXA)や資源環境観測解析センター(ERSDAC)から偏波データの供給を頂き, 200シーン(400GB)を超えるデータ解析を実施した。表面散乱を青色, 2回反射成分を赤色,体積散乱成分を緑色にカラー合成し,物理散乱モデルを視覚的に理解できるよう工夫を施し,画像を作成した.その結果,海や火山の火口近くは必ず表面散乱が卓越し青色に表示されること,人工物体のある箇所は赤色が卓越すること,植生は緑色に表示されることなどが分かり,実際の状況をかなり正確に反映していることを見いだした。そして光学画像よりも明瞭に地上の情報が得られることが判明し,その有効性を確かめることができた。これらの解析結果の一部は今後ERSDAC, JAXA-EORCのWebにも掲載される予定である。
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