本研究の目的は、光ファイバにそったひずみの分布測定における距離分解能を1mm程度まで高め、かつ、操作性に優れた測定装置の構成技術を確立することである。その実現のため、本研究では、ブリルアン増幅を応用した従来のひずみ分布測定技術であるBOTDA(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)において、新しいパルスポンプ光の構成を発案した。 2007年度は、パルスポンプ光を音波励起用と測定用のパルスで構成し、測定用のパルスの位相を変化させる位相シフトBOTDA(PSP-BOTDA)を提案した。さらにその特性を理論的および実験的に明らかにした。その結果、従来BOTDAの距離分解能1mを凌ぐ、25cmの分解能を実現した。 2008年度は、PSP-BOTDAのパルスポンプ光を符号化し、その相関特性を利用したSN比向上について研究した。次の2種類の符号化方法を提案した。(1)音波励起用と測定用のパルスの対で符号1bitを表す方法。(2)音波励起用パルスと対となる測定用パルスを分割して、符号パルス列とする方法。方法(1)により符号長32bitのパルスポンプ光を発生させ、約7dB(光パワー換算)のSN比改善と20cm未満の距離分解能を達成した。方法(2)によっても、4bitパルスポンプ光を発生させ、その効果の確認実験に成功した。 今年度(2009年度)は、光回路を使用した符号化パルスポンプ光の発生とその復号化技術を研究することを計画した。しかし短パルス光の発生の検討に時間がかかり、光回路を使用した符号化パルスポンプ光の発生には至らなかった。一方、上記の方法(2)のパルスポンプ光の研究は進展させた。数値計算による特性のシミュレーションと実験による検証を行うことにより、ブリルアン増幅に関与する音波の寿命によって、符号パルス列の最大時間幅が制限されることを明らかにした。また、その符号長とSN比改善量の関係を定量的に示した。
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