研究概要 |
本研究は、振動膜等の物体を一切使わずレーザ光により音を直接検出する方法、あるいは光の中から音情報を取り出す方法(「光波マイクロホン」と総称)の基盤技術の確立を行うことを最終目標とする。特に実用化の視点からはSN比の改善が最重要課題として絞られてきているが、本研究では光波マイクロホンを構成する各主要部(光源、光ビーム(音センサ)部、光検出器、電気信号処理部,等)について、信号増大やSN比改善及び高機能化等について理論及び実験の両両から検討する。本年度は、主として光検出部、光検出回路、音検出用レーザビーム部の検討を行った。主な結果は以下の通りである。 (1)2分割光検出器の差動増幅方式の検討:光観測面に生じる時間的位相が反転した2つの回折像を2分割光検出器で測定し、その出力信号を差動増幅にかけSN比改善効果を検証する実験を継続実施した。この方式により、信号が増倍されること、同位相ノイズ(蛍光灯など)をキャンセルできること、これらによりSN比改善が得られること等を示した。(2)光波マイクロホンの光検出に適した信号処理回路の検討:従来の研究では市販汎用回路基板を用いていたが、ここでは光波マイクロホンの検波に適する回路を試作し検出性能の比較測定を行った。2素子差動方式については、レーザノイズの一部低減が確認された。ただし、1素子の通常測定においては決定的なSN比の改善効果は観測されなかったので、継続的な検討が必要である。(3)音受信用レーザビーム部での信号増幅の検討:平面ミラー多重反射方式では10倍程度の信号増大は容易に実現できる。さらに、擬似レーザ共振器形の反射光学系により音信号の増幅の可能性を理論的に考察した。透過ミラーの反射率を上げるほど増幅効果が得られるが、99%反射率ミラーでは実験系が不安定になりやすく、十分な性能が得られなかった。90%反射率ミラーで実験継続中である。
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