研究概要 |
本研究は、振動膜等の物体を一切使わずレーザ光により音を直接検出する方法、あるいは光の中から音情報を取り出す方法(以下,「光波マイクロホン」と総称)の開発を目的とするものである。本年度研究では、光波マイクロホンを構成する各部(光源、レーザビーム音受信部、光信号処理部、光検出器部、電気信号処理部)の改善や最適化による信号増大(SN比の改善)の可能性を理論及び実験の両面から検討することにより、光波マイクロホンの実用化基盤技術を確立することを目的とした。得られた結果の要約を以下に記す。 (1)光学的な音信号増幅方式の検討:(1)光共振形の光波マイクロホンの増幅性能改善効果を実験的に確認した。機材性能により完全な共振状態を達成できなかったため、定量的評価は今後の課題である。(2)2分割型光検出器の出力差動方式による信号増幅効果と信号処理法としての有効性を実験的に明らかにした。 (2)2つの光ビームによる相関測定方式の検討:測定音場内で適当な角度で交差させた2つのレーザビーム光学系を用い、両出力信号の相互相関処理により空間分解能が改善されることを確認した。相関値等から音信号に変換再生する方法については今後の課題である。 (3)光波マイクロホン光学系におけるノイズ低減の検討:レーザ光源への戻り光や光学系中での反射光の影響などをノイズ低減の視点から検討した。特に、光検出面に生じる反射光干渉縞の影響が大きいことを明らかにし、光波マイクロホンをコンパクト化する場合の対応策を示した。 (4)光ファイバ束による音の入射方向分離測定及び指向性制御の検討:音の入射方向により観測面内での光回折像の位置が変わるので、光ファイバ束(又は多分割形の光検出器)を用いることにより音の進入方向毎の分離測定が期待できる。また、全ての検出器出力を1本にまとめれば全指向性の音検出となる。ここでは16chの光ファイバ束を用いて、音の進入方向毎の分離測定(立体録音)及び高指向性化、全指向性化の実現可能性を実験的に明らかにした。
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