研究概要 |
「予防保全を目指した磁気センサによる鉄系構造材の疲労状態監視法の構築」の研究の第一の目的は,予防保全に対応した疲労状態監視用の磁気センサを開発することである。また,第二の目的は,疲労状態監視を常時行える安価な測定システムを開発することである。そこで,平成19年度は,主にオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304,SUS316)を対象にして新しく考案・試作する偏差型磁気センサ(パンケーキ型コイル)の試作と状態監視型疲労蓄積量測定システムの試作・評価を行うことを計画し,実行した。その結果,各種ソフトウエアやハードウエアの整備・開発を行い,基礎となるシステムを作成し,パンケーキ型コイルのインダクタンスの変化を利用してSUS304やSUS316の疲労蓄積状態の評価に良い結果を得た。この方法は,小さなパンケーキ型コイルを100kHz程度で励磁し,試料に近づけると渦電流を介した相互作用で,疲労により変化した試料の抵抗率や透磁率の変化を捉えるものである。両被検査材において疲労蓄積量とコイルのインダクタンスは良い相関を示した。また,疲労による抵抗率の変化についてもSUS304,SUS316を用いて実験を行い,抵抗率と疲労蓄積量との間には良好な関係が見られた。 さらに,平成20年度は,インダクタンス法に用いるパンケーキ型コイルの形状の最適化や,フェライト系ステンレス鋼(SUS430)にインダクタンス法を適用した。このインダクタンス法はあらかじめ磁性を持つSUS430においてもSUS304などと同様に疲労蓄積量とパンケーキ型コイルのインダクタンスの間に相関が見られた。これは,パンケーキ型コイルを用いるインダクタンス法による疲労状態監視法がオーステナイト系ステンレス鋼だけでなく一般の鋼などに適用可能であるという結果を得た。また,パンケーキ型コイルの厚さが薄いほど疲労検出に効果的であることも分かった。
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