研究概要 |
本研究では,連続測定下にある量子制御系を対象とし,その制御性能限界を明らかにすることである.特に平成20年度では前年度までに得られた結果を発展させ,いくつかの重要な量子状態を達成する安定化フィードバック則を導出し,その性能限界の解明を目指す,研究活動は次の3点で実施される.A:理論構築,B:数値実験による検証,C:研究発表.これらA〜Cの3つの研究活動について次の結果を得た。 A:理論構築 量子ビットを実現する一つの候補である量子スピン系を対象とし,連続測定下にある量子系のフィルタリング方程式の収束度を得るために不可欠となる,連続入力によって大域安定化を実現する制御フィードバック則を求めた.特にそれまで得られていた安定化達成のための条件に対して,より弱い条件の導出に成功した.これにより,制御系の自由度が増すことになる.また量子情報理論で重要となる量子エンタングルド状態を,連続信号のフィードバック制御により達成するための,測定系が満たすべき条件について,部分的な結果を導出した。一方で,量子フィードバック系における観測と制御の役割を,量子状態のエトロピーの時間変化を数式的に解析することで明らかにした. B:数値実験による検証 理論的に得られた量子ピット系の安定化について,特にスピン系における量子エンタングルド状態を目標として,それへの収束や収束速度を数値実験により検証した.具体的には本研究の予算で購入した高速計算機により,フィードバック制御された多次元スピン系の量子状態をシミュレートし,測定効率,制御パラメータの値に対する収束度の変化が理論的に得られた上界値と整合することを確かめた. C:研究発表 結果に関して平成20年度は,2008 American Control Conference, IFAC,計測自動制御学会Annual Conference,計測自動制御学会制御部門大会でそれぞれ発表した.
|