研究概要 |
今年度は,ハミルトン摂動法と安定多様体法によるハミルトン・ヤコビ方程式の近似解法に関する論文がIEEE Transaction on Automatic Controlへ掲載された.また,シミュレーション学会で本研究に関する内容が解説論文として掲載された.現在は,応用例を積み上げ,Matlabなどの数値計算ソフトを用いて近似解を必要な精度で必要な領域に対して求めるソフトウェアの開発を行っている.昨年度から続けている航空機の大迎角飛行の安定化問題は,実機データを用いた設計が可能になるなどの進展がある.さらに,研究室所有の磁気浮上実験装置に対しても非線形サーボ系を設計し,本研究で求めた非線形制御が良好な性能を保証することを確認した.これら一連の応用成果は,次のような重要な意義をもっている.すなわち,これまで非線形制御理論は実用上利用可能な成果が乏しかったために,制御工学を用いる産業界では,線形の範囲でのみモデリングを行う習慣が定着している.しかし,より詳細なモデリングによって非線形性を考慮することで,これまで線形制御やその組み合わせ・スケジューリングなどで対応して得られている性能を格段に上回ることができる.これにより,産業界においても非線形モデリングや非線形同定が今後重要なテーマとなって注目されることになろう. なお,昨年度計測自動制御学会で掲載された論文が2008年度論文賞(武田賞)を受賞した.
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