研究概要 |
本研究の目的は、平常運転時のプラントの時間応答を用いて、数式モデルを作成することなく、多変数制御器の設計法を与えることにある。以下の点を明らかにした。 1)動的制御器のデータによるゲイン調整現代制御理論により数式モデルに対してオブザーバーによる動的制御器を設計するが,実装すると期待される性能が得られないことが多い。このような場合に数式モデルの同定と再設計を行わずに,システムのステップ応答データから動的制御器を調整する方法を検討した。1入力系に対して感度と相補感度の望ましいゲイン特性を達成するために,動的制御器の分子の係数が満たすべき制約条件を導出し,それを線形行列不等式で表し,数値最適化で解く方法を提案した。シミュレーションで有効性を確認した。 2)2慣性系の速度制御実験による検証上記の1)で述べた方法をモーターで駆動されるディスクの回転速度制御に適用し,有効性を実験で確認した。この系は摩擦やドライバの非線形性が強くあり,測定雑音も含まれている。まず,この線形モデルを同定し,現代制御で制御系を設計し,シミュレーションで良好な応答を確認した。実機ではオーバーシュートが大きかったので,提案法を用いて動的制御器のゲイン調整を行ったところ,オーバーシュートのない良好な応答が得られた。 3)多変数PID制御器設計法のアルゴリズムの拡張データを用いてPIDゲインを調整する方法は昨年に与えたが,そこでは感度関数のみの整形をおこない線形計画法で解を求めた。今回はロバスト安定性のために相補感度関数制約も考慮した。これにより,線形行列不等式で解を求めている。
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