研究概要 |
生物の自己組織化として次の2つの現象を考察対象にし,気候などの環境の変化に伴う増殖率,感染率などの揺らぎが自己組織化による時空間パターン形成に及ぼす影響をシミュレーション解析により明らかにした. (1)生態系の食物連鎖における自己組織化現象の解析:植物・動物プランクトン,魚によって構成される捕食者・被食者系における自己組織化現象について天候などの環境の変化に起因する増殖率の不規則な揺らぎを考慮した確率モデルを提案した.提案した確率モデルを用いて,プランクトンの自己組織化による時空間パターン形成に及ぼす影響をシミュレーションによって考察した.その結果,魚の捕食率がホップ分岐点より不安定側でかなり小さいかあるいは安定側にある場合は不規則揺らぎの自己組織化への影響は小さく,ホップ分岐点の不安定側で分岐点に近い場合はその影響が大きいことが分かった. (2)生物個体群における感染症伝播に伴う自己組織化現象の解析: 個体数が少ないときに増殖率が負となる強アリー効果を考慮した感染者・未感染者モデルにおける感染者密度分布,未感染者密度分布の時空間挙動を解析した.その結果,アリー効果強度,感染者死亡率,拡散効果の相互作用により,各密度分布の時空間パターンがシェルピンスキーガスケット上のフラクタル構造を自己組織化的に形成する場合があることが分かった.また,増殖率の揺らぎが自己組織化に及ぼす影響についても考察し,自己組織化によるパターン形成への外乱,感染者死亡率,アリー効果の相互影響を明らかにした.
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