研究概要 |
電磁駆動弁はエンジンの吸気弁や排気弁としての利用が期待されている.電磁駆動弁を用いることで任意のバルブタイミングを実現することができ,従来のカムシャフトと連動した弁に比べて十数パーセントの燃費,出力の向上が期待できる.電磁駆動弁は電機子をばねで吊った構造をしており,この電機子を電磁石で吸着することで,弁を開閉する.電機子はおよそ9[mm]の電磁石間を3[ms]から4[ms]以内という短時間で移動する必要がある.このように電機子は高速で動くため,電機子と電磁石が衝突すると騒音や衝撃が発生し,好ましくない.また,衝突は耐久性の面からも好ましくない.そこで,電磁石が電機子を吸着する時の速度を概ね0.1[m/s]以内とする運動制御が必要になる.電磁駆動弁の制御系の設計に際し駆動弁の機構を起因とする制御の難しさ・計算時間の問題があることが知られている. これまでの研究では上記の問題点の解決のためにモデル予測制御系の構成を提案し,その制御方法を検証するための試験機の仕様を計算機シミュレーションにより決定した.さらに電磁駆動弁のサイズを拡大した試作機を作成し,その数式モデルによるシミュレーション結果と実験結果の比較検証を行ってきた.今年度は、その実験結果を踏まえ、数式モデルの改良のためにシステム同定を行った.また,モデル予測制御のモデルと実機との差を保証するために外乱推定オブザーバを付加し外乱の抑制を行った.実験において問題になった電磁石の特性を考慮して,制御入力の立ち上がりを抑えるための機構を導入し,一定の効果を得ることができた.昨年度同様に実装するためにモデル予測制御系のコントローラの計算時間の短縮が必要であったため,制御アルゴリズムの改良を行い計算時間の短縮を行った.以上のように,電磁駆動弁の制御に関して実用化に向けた重要な研究成果を得ることができた.
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