計画通り、(1)質と量を統融合する基礎理論、(2)生命システムダイナミクス、(3)情報通信ネットワークダイナミクス、の3要素の有機的連係させ、主プロダクトである抽象普遍的理論(1)を作り上げた。最終フェーズである本年度は、中心要素(1)と他要素(2)(3)の連係を双方向にして、フィードバック、カスケード、時間遅れをキーワードとして、それらを統一して包含する基礎論体系を確立するとともに、それらの一つ一つに特化させたときに現れる相違事項について整理した。フィードバックとカスケードは学術雑誌での公表を終え、時間遅れについては雑誌投稿と改訂を繰り返している。本年度の(3)については、一昨年度に招聘したProf.P.Pepeから得た知識を活用することで、CDMA(符号分割多重接続)無線通信における伝達遅れと外乱に対する電力制御の安定性の解析に成功した。CDMA電力制御において世界に類のない成果である。これは基盤理論(1)の開発が可能にしたものであるとともに、(1)の有効性の実証ともなった。(2)については、昨年得た大きな成果を(1)ヘフィードバックすることで、非線形ダイナミクスの構造と量情報を統融合する理論体系を大規模ネットワークを扱う枠組みへと進化させることに成功した。これら(2)と(3)の成果を、速報として国内の研究会議で発表し、国際会議へ投稿した。さらに(1)の進化、および、そのための(2)(3)以外への視野・知見の拡大を目的に、Prof.Randy Freeman(米、Northwestern Univ.)のを招聘した。討議の結果、ほぼ成していた理論基盤(1)に新たな重要な解釈を与えることに成功し、昨年度招聘したProf.Antoine Chaillet(仏、Univ.Paris Sud)の協力も得て、量情報の新しい見積もり方法について国内での速報発表を済ませ、国際会議へ投稿した。
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