劣駆動ロボットでは、アクチュエータの数が全駆動システムに比べて少なくて済むため、コスト、重量、信頼性の点で優れている。そのため、宇宙、深海などでの極限作業ロボットのみならず、今後は家庭での作業ロボットなどの開発においても非常に期待されている。 ところが、多自由度の劣駆動ロボットは、応用のニーズがあるにもかかわらず、その姿勢制御に関する解析、設計理論の進展は遅く、実際的に有用なものは存在しないのが現状である。本研究では、多自由度劣駆動ロボットに装備する複数のアクチュエータを協調駆動させることのできる制御系を設計・解析することを目的とし、本年度の主な研究成果としては、以下のものを挙げる。 任意の1つの関節が非駆動であるnリンクロボットを任意の初期状態から真上平衡点の任意の近傍まで振り上げる制御則の設計、ならびにその動きに関する大域的解析を、非駆動関節の全ての配置に対して統一的に行なうことを目的とする。まず、非駆動関節で分けられる2つの仮想合成リンクシリーズの逐次的な構築法を考案するとともに、それらに基づく駆動関節の角度に関する座標変換を提案した。つぎに、その座標変換を用いた振り上げ制御則を設計し、その制御則のもとでのnリンクロボットの動きを大域的に解析した。さらに、2つの仮想合成リンクシリーズを用いて、本論文の振り上げ制御目的が達成できるための制御パラメータの選定法を与えた。本研究は、一つの関節が非駆動であるnリンクロボットに対して、仮想合成リンクの逐次的な構築に基づき、その振り上げ制御系を設計・解析する方法を確立した。これは、1つの非駆動関節を有するロボットの振り上げ制御に関する従来の成果を統一的に扱うことのできる理論であり、受動性に着目したエネルギー制御法による多自由度劣駆動ロボットの制御系の設計・解析法に対し、新たな糸口と知見を与えるものと考える。
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