研究概要 |
今年度の研究成果は下記の3点にまとめることができる。1.火花点火(SI)エンジンの始動時のMLDモデルの構築のため、社団法人計測自動制御学会制御部門の調査研究会「エンジン・パワートレイン先端制御理論調査研究会」が提案しているシミュレータを解析し、シミュレータに含まれる各要素と要素間の関連を多角的に検討し、数式モデルの作成に成功した。2.一般のMLDモデルに対する予測型極値制御手法の定式化の前段階として、極値制御方式による始動制御方式を確立した。そこでは、従来法で問題となっていた噴き上がりなどの過渡応答改善のため、ニューラルネットワークを導入し、事前にモデルに基づく学習を行うことで、大幅は過渡応答改善が得られることを示した。さらに、適応フィードバック線形化手法を用いる可能性について検討し、過渡応答改善には問題は残るが、今後のパラメータ調整などにより、十分SIエンジンの始動制御に貢献できることが数値シミュレータ試験により示された。極値制御方式を用いた場合には、最終的には非モデルベース制御となり、適応フィードバック線形化手法の場合にはモデルベース制御となる。3.得られた数式モデルをベースとして、エンジン・パワートレインに対するMLDモデルの構築を行った。また、得られたMLDモデルをMATLAB/Simlink(Matlab/Simulink)上に展開し,シミュレータと比較することで,MLDモデルの妥当性について多角的に検討した。1.で作成した数式モデルでは、任意関数表現が含まれており、その影響で構築したMLDモデルにも任意関数を含むことになった。今年度の成果から、所属学生が第36回制御理論シンポジウムにて発表された「極値探索制御を用いたスロットル角制御手法とSIエンジン始動制御への応用」に関して「計測自動制御学会制御部門学術奨励賞」を受賞した。また、所属学生が「自動車技術会大学院研究奨励賞」を受賞することができた。
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