研究概要 |
鉄鋼スラグ水和固化体は,鉄鋼製造工程で発生する副産物を用いて製造される建設材料である。鉄鋼スラグは,高炉スラグと製鋼スラグの二つに大きく分類される。高炉スラグは,銑鉄を製造する高炉で発生するもので,その成分は,天然の岩石に類似したものである。一方,製鋼スラグは,銑鉄を鋼にする工程において生成されるものである。高炉スラグが,銑鉄1トン当たり約290kg生成されるのに対し,製鋼スラグは,粗鋼1トン当たり約110kg生成される。平成18年度における高炉スラグおよび製鋼スラグの発生量は,それぞれ,約2,500万トンおよび約1,400万トンである。鉄鋼スラグ水和固化体は,コンクリート用材料としての使用実績が低い製鋼スラグを用いることに特色があり,大量の産業副産物を有効利用できる環境負荷低減型材料として期待されている。鉄鋼スラグ水和固化体は,主に護岸工事用ブロック等の無筋構造物を対象に,試験施工が多く行われている。大量に発生する鉄鋼スラグの有効利用を広げるためには,鉄鋼スラグ水和固化体の有筋材への適用を検討する必要がある。 本年度は,とくに細骨材の種類が鉄鋼スラグ水和固化体の耐久性に及ぼす影響を調べた。製鋼スラグを細骨材に用いた鉄鋼スラグ水和固化体は,普通コンクリートに比べて,圧縮強度,中性化,塩化物イオンの浸透性および耐硫酸性が劣ることを実験的に明らかにするとともに,細骨材に高炉スラグを用いた鉄鋼スラグ水和固化体は,圧縮強度の増加は小さいものの,中性化,塩化物イオンの浸透性および耐硫酸性は改善されることを明らかとした。
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