研究概要 |
鉄鋼スラグ水和固化体は,セメントおよび天然骨材を全く使用せず,製鋼スラグ(転炉スラグ,溶銑スラグ等)や高炉スラグ微粉末等の精錬過程で生じるスラグ類や,フライアッシュ等のリサイクル材料で構成される固化体であり,従来コンクリートと同等の強度を有するものである。また,pHが低く,鉄分を多く含むため,海洋における生物付着性も良好であり,港湾工事における消波ブロックや被覆ブロック等に適用されている。鉄鋼スラグ水和固化体の適用範囲をさらに拡大するためには,鉄鋼スラグ水和固化体の高強度化,高耐久性化,また,この素材の特徴を生かした用途開発が必要である。本研究では,有効利用できる可能性がありながら,利用先が明確でなく埋立て処分されてきた製鉄の過程で生じる製鋼スラグをコンクリート用骨材として有効に活用するための技術開発と,製鋼スラグを用いることによる経済的効果および環境負荷低減効果等の試算を行った。 鉄鋼スラグ水和固化体の耐凍結融解抵抗性,塩分浸透性,耐硫酸塩抵抗性,中性化および収縮に,製鋼スラグの吸水率,密度,カルシウム含有率等が及ぼす影響を整理し,本研究で開発を行った耐凍害性に優れる鉄鋼スラグ水和固化体および有筋部材へ適用可能な鉄鋼スラグ水和固化体が,従来の鉄鋼スラグ水和固化体に比較して,各々の性能が向上するメカニズムを検討した。 また,鉄鋼スラグ水和固化体を用いた構造物(または製品)の設計に必要とされる物性値を実験により確認し,鉄鋼スラグ水和固化体の有筋構造物への適用性について検討を行った。とくに,鉄筋コンクリート構造物として適用するために要求される性能の一つが乾燥収縮によるひび割れに対する抵抗性である。鉄鋼スラグ水和固化体の乾燥収縮ひずみ特性と,収縮によるひび割れに対する抵抗性を調べるとともに,使用荷重下でのひび割れの大きさを低減する手法を示した。
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