研究課題
本研究の目的は、コンクリートでアルカリシリカ反応(ASR)を起こす可能性のある骨材の生産現場である砕石工場切羽での反応性骨材原石の分布状態を明らかにすること、並びに、切羽・産地別のASR反応性の特徴を把握・分類するモデルを確立することである。わが国のASR反応性骨材岩種には火山岩系の安山岩と堆積岩系のチャート・珪質粘板岩などがあり、いずれの岩種も全国各地に分布する。初めに近隣で被害を発生させた反応性チャート・珪質粘板岩の砕石切羽の地質状況、原石の岩石学的特徴、骨材製品の品質などを調査し、採取試料の反応性を実験室内で調べた(偏光顕微鏡(PM)観察、JISA1145化学法、JISA1146モルタルバー法など)。次に、実構造物のASR被害を関西・中国地方で多数発生させた香川県豊島安山岩砕石の砕石場跡地の切羽の調査と岩石・骨材の入手、実験・観察を行い、1983年頃の結果と比較した。また、北海道の安山岩砕石も入手し同様の室内実験を行った。主な結果を以下に示す。(1)原石から作製したPM用薄片の観察では、堆積岩の珪質部分の多い岩石(チャートなど)では、カルセドニーの量、安山岩ではガラス量が反応性判定に有効である。(2)化学法及びモルタルバー法では、安山岩は化学法とモルタルバー法の判定結果が一致するが、堆積岩では両試験結果の一致しない場合が多い。なお岩種に関わりなく、しばしばペシマム現象が認められる。(3)モルタルのASR反応状況をPM観察にて短期間で判定できるのは、反応性が高い場合であり、通常はない。実構造物採取コアでは、経過時間が長いので容易にひび割れや反応生成物が見える。総括として、同一砕石工場内でも地質、岩石の微細構造、化学法、膨張挙動等が複雑に変化し変動が大きく、また化学法とモルタルバー法の判定で不一致が多い(評価基準の再検討が必要)。モデル化には更なる時間を要す。
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日本コンクリート工学協会, コンクリート工学年次論文集 30, No. 1
ページ: 999-1004
日本材料学会, 材料 第57巻
ページ: 967-972
http://www.aitech.ac.jp/~morino/morinoHP.htm